円安は155円まで-その理由と円高になるタイミング-

2023年10月3日の23時頃、NY外国為替市場では1ドル150.16円まで円安が進みました。その数分後には147.37円まで円高に進む場面が見られました。

一部では財務省による為替介入ではとの声もありますが、神田財務大臣は4日の朝には「コメントを差し控える」とし、その真偽は不明です。

これまでの円安は日米金利差に起因しています。いったん120円台まで落ち着いていたドル円ですが、米国経済が思った以上に堅調で、米国金利が現在の水準で据え置かれるとの見方が強まりました。

それによって、いったん落ち着いていた円安が再び140円台後半まで進行した格好です。
今回は、今後のドル円の動向についての考察していきます。

何円まで円安が進むか

結論から述べると、円安はせいぜい155円程度までと想定しています。詳細は後述していきますが、日米の金利差を考慮してあり得るドル円レートであること。加えて、米国経済に景気減速の兆候が見られることです。

なぜドル円は円安に進んだのか

2023年1月には127円台まで円高に戻しまたが、それ以降は徐々に円安に進行してきました。

GoogleFinaceより引用:「直近1年間のドル円レート」

FRBによる金利上昇が一服するのではという見方から円高に進んでいましたが、想定以上に米国経済が強く利下げのタイミングの見通しに不透明感が増したためです。

なぜ米国経済は強いのか

なぜ米国経済が強いのかということについてですが、それはずばり米国大統領選挙前のバラ撒き政策のためです。

バラ撒きは州によってまちまちですが、マサチューセッツ州では申告者への14%の税金還付を行ったり、モンタナ州では夫婦ともに納税している場合最大で2500ドルの還付を行ったりしています。

金利の利上げは加熱した経済を冷ます効果があります。FRBは経済の過熱に伴う高インフレを退治するという明確な目標をもって利上げを行ってきました。

ですが、思った以上に米国経済が強く、インフレ退治が完了しない段階での利下げに踏み切ることはできません。そのため、現段階では金利の据え置きが長期化するのではとの見方が大勢です。

景気減速の兆候

景気後退のシグナルとして今回紹介するのは、米国におけるGDP(国内総生産)とGDI(国内総所得)の乖離率です。

この2つは非常によく似た指標ですが、GDPは生産量を評価するのに対し、GDIは所得を評価する指標となっています。

Real Investment Advice:「GDI Or GDP – 2 Economic Measures, 2 Different Messages」より引用

上のグラフはこのGDPとGDIの乖離率をグラフ化したものです。プラス軸は国内総生産が増加しているのに、国内総所得は下がっているという状況を示しています。

2001年の丸で囲われた部分はドットコムバブルの崩壊時のものです。2008年の丸で囲まれた部分はリーマンショックが起こった時のものです。

また、1983年ころなどのリセッション(景気後退)が起こったタイミングで、この乖離率が大きくなっています

2023年現在の乖離率は3.72シグマと第二次世界大戦以降、最大となっています。

円安は155円までと考える理由と円高転換のタイミング

理由:金利差がこれ以上拡大しない

市場参加者の多くが、米国の現在の金利はターミナルレートに達したとみています。

ターミナルレートとは、金融引き締めサイクルにおける利上げの最終着地点のことです。到達金利とも呼ばれます。

つまり、米国金利これ以上引き上げられることはないと考えています。今後はこの金利がいつまで維持されるのかということに関心が集まっています。

金利差から正確に為替レートを言い当てることはできませんが、一定の範囲内で予想することができます。※参考「中央経済社Digital:金利差から為替レートは計算できるのか?

現在(2023年10月)の金利差が4.08であることから考えても155円程度が想定レンジの上限となります。

表:金利差による為替レートのレンジ

中央経済社Digital「金利差と想定スポットレートのレンジ」より引用

現在の金利差でのドル円は140円から155円の範囲が想定レンジとなっています。

円高の転換はいつ?:2024年には大統領選挙が実施される

米国大統領選挙が2024年11月4日に実施されます。そこに向けたバラ撒き政策も落ち着いてくる見込みだからです。

これが落ち着いてくると、景気の過熱感を冷ますために行っていた金融引き締め(利上げ)がより効果を発揮し、米国経済の減速が鮮明になってきます。

それに伴って、金融引き締めの終わりのタイミングも見えてくることになります。つまり、このタイミングで円安の終わりを迎えるタイミングということになります。(実際にはさまざまな状況を市場が織り込み、もう少し早いタイミングとなると思います。)

まとめ

まとめ

・日米金利差はこれ以上は拡大しない見込み

現在の金利差からドル円は140~155円が想定レンジ

・景気減速のタイミングが利下げのタイミング=円高への転換

・景気減速のシグナルが出ている。今の米国景気はバラ撒き政策によるもの

・大統領選挙の行われる来年には、景気減速の色が明瞭になる。

以上が現在のドル円に関する考察でした。一部では、根拠なく円安は200円まで進行するなどと不安をあおるようなものも見かけましたので記事にしてみました。

いずれにしろ最適解は、円安であろうが円高であろうが淡々と投資を続けることです。

様々な情報や情勢に惑わされず、投資を行っていきましょう。

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