NISA制度は国が用意した、税制優遇制度です。来年からは新NISA制度も始まります。
NISA制度は長期でリターンを最大化していくインデックス投資との相性が非常によく、その中でも人気のある全世界株式(通称:オール・カントリー)について解説していきます。
全世界株式(オール・カントリー)とは
全世界株式(オール・カントリー)(通称:オルカン)は、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスに連動するインデックス商品の総称です。
MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスは先進国23か国と新興国24か国の大型株から小型株で構成される株価指数です。11のセクターの2700銘柄に分散投資することができます。
このインデックスの国別構成比率は次の表のようになっています。
一番構成割合が高いアメリカが60.6%と全体の6割で、大部分がアメリカ市場が占めています。
全世界株式の過去のリターンは次の通りです。青線がオールカントリー・カントリー・ワールド・インデックスETF(ACWI)のチャート、オレンジがS&P500のチャートです。
ここ10年では、オルカンはS&P500をアンダーパフォーム(下回って)しています。巷では、このチャートからS&P500で十分という意見も散見されます。
もう少し深く、S&P500との関係を見ていくと、オルカンの有用性が見えてきます。
次の表は、1970年からの世界市場と米国市場の時価総額比率を示した表です。
濃青が全世界市場、薄青が米国市場です。
グラフの通り、1990年付近は世界市場が半分以上を占め、2000年代以降にじわじわと米国市場の割合が高まってきました。
さらに、70年代から国・地域別の株式市場の騰落率を見てみると、さまざまな国・地域がローテーションしながら成長してきたことが分かるかと思います。
1970年代は日本株の時代でしたが、直近10年は米国株の時代になっています。1970年代に米国株投資をしていた場合には非常につらい期間となっていたことと思います。
全世界株式は、全世界に分散投資しているため、この移り変わる市場の盛り上がりをも広く拾っていくことができます。
全世界株式(オール・カントリー)がおすすめ理由
全世界株式がおすすめの最大の理由は、一度積立設定をしてしまえば細かい運用をしなくてよい点です。指数に連動する商品となりますので、定期的なリバランスから運用まですべてを自動で行ってくれます。
また、米国株だけでは心配という人にとっては、先進国から新興国まで広く投資することが可能となります。
また、世界株式は米国株式をアウトパフォーム(上回る)する可能性が示されています。Vanguard社が2023年7月27日に公表した「Market perspectives」によると、今後10年間の米国株のリターンが4.1~6.1%と想定している一方、全世界株式のリターンを6.4~8.4%と想定しています。
つまり、米国再大手のVanguard社は、今後10年は全世界株の時代になると予想していることです。
元・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元氏は、米国株式について別な視点から考察しています。
これまで米国市場は株主還元を積極的に行ってきました。
そのため、株価上昇につながるリソースを消費しきってしまっているのではないかという指摘です。
つまり、自社株買いなどによる株価上昇が見込めないということになります。
逆に全世界株式市場はその余地を残しており、株価上昇の期待もできるのではないかということを述べています。
全世界株式を買うなら?おすすめ投資信託
全世界株式を買いたいと思ったら、三菱UFJ国際-eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)がおすすめです。
日本国内における最大の純資産を誇り、流動性も極めて高いです。そして、業界最安値の信託報酬率です。記事を寄稿した2023年8月時点で信託報酬率は0.1133%となっています。
現時点でも信託報酬率は相当低水準です。しかし、2023年9月8日より0.05765%にさらに引き下げることを発表しました。
この信託報酬率の低さは衝撃的な値です。eMAXISシリーズは業界最安の信託報酬率を謳っています。
今後も業界最安の信託報酬を期待できます。
今回の信託報酬の引き下げは、他社から出された低信託報酬率の商品に対抗する形で行われました。
さすがに引き下げないのではとの見方があったなかので引下でした。これまで積み立てきたユーザーにとっても非常に喜ばしい知らせとなり、信頼をより強固なものとしました。
NISAでオルカン1本で大丈夫?
ここまで、全世界株式(オール・カントリー)の良さについて述べてきました。
ですが、あえて1つ欠点を挙げるとするならば、米国株に集中しすぎているという点です。
米国に集中投資するのであれば、S&P500で良いですし、分散を効かせたいのであればもう少し米国以外の先進国と新興国の割合を増やしたいところです。
(※現代ポートフォリオ理論に基づくと、全世界株式の配分がベストという結論になります。)
そこで、Vanguard社「Improved outlook for investors in global equity markets」(世界の株式市場における投資家の見通しの改善)を見てみると、新興国株の割安感が目立っています。
表の緑いろの部分が「割安」、黄色が「適正」、赤色が「割高」ということになります。新興国市場(EM equity:Emerging markets)は割安ということになります。
加えて、グローバルサウスを中心とした新興国はこれからも人口増加に伴う経済成長と株式市場の成長が見込めます。
ですので、もう少し新興国市場の株式を増やすということも一つの手です。
そのために、コア・サテライト戦略で85~90%を全世界株式で保有し、残りの10~15%を新興国を中心とした投資信託を保有するという戦略が考えられます。
まとめ
- 全世界株式(オール・カントリー)は堅実な成長を遂げてきた
- 長期を前提としたNISAとの相性が良い
- S&P500には過去10年の成績は劣るものの、今後10年はリターンが上回る可能性がある
- あえて欠点を挙げるなら、分散が弱いこと
- この対策として、割安感があり成長の見込みがある新興国に投資をする
※この場合、多くてもポートフォリオ全体の15%程度に留める
全世界株式(オール・カントリー)は多くの個人投資家が買っている商品です。ど安定の堅実さを取りたい方にはおすすめです。
ちなみに我が家は、今後もS&P500に投資を継続していきます。理由は、米国株が低迷する時期があったとしても、その時期に淡々と積立を行うことで、数十年後の成長に期待しているためです。
加えて、これまでS&P500をコアに投資をしてきたため、思い入れもあります。仮に暴落が起こったとしても持ち続けることができると考えているからです。
ですが、今から投資を始めるのであれば全世界株式1本で行くかと思います。
コメント